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「解約料の実態に関する研究会」が開催されています

更新日:2024.04.17
弁護士
志部淳之介
1 キャンセル料に関するルール
Eコマース取引において、消費者と事業者の間でよくトラブルになるのが、契約をキャンセルした場合のキャンセル料です。
消費者と事業者の間の契約については、解除(契約キャンセル)に伴い事業者に生ずる「平均的な損害の額」を超えるキャンセル料の定めは、無効となります(消費者契約法9条1項1号)。
 ところが、解除に伴い事業者に生ずる損害とは、そもそも何なのか。例えば、携帯電話の契約を解除した場合を例にします。
キャリアに発生する平均的な損害とは、それまでに提供した割引額なのか、キャンセルにより残契約期間で得られなくなった利益なのか、裁判例においても統一的な見解は示されませんでした(大阪高判平成24年12月7日、大阪高判平成25年1月30日等)。
このように、「平均的な損害の額」を越えたキャンセル料条項が無効となるというルールは、トラブル解決のツールとしては不十分であると指摘されていました。
2 消費者庁の研究会
そのような現状を受け、消費者庁では、令和5年12月から、解約料の実態に関する研究会が開催されています。(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/meeting_materials/review_meeting_005/)
そこでは、以下の点がが研究事項として挙げられています。
研究会の第2回の資料として、消費者を対象としたキャンセル料についての意識調査の結果が公表されています。
意識調査の結果を分析した有賀敦紀教授(中央大学文学部心理学専攻)は、次の点を指摘しています。
つまり、企業が情報提供を十分に行ったり、キャンセル料はかかるが価格は安い商品とキャンセル料はかからないが価格は高い商品を比較対象できるように表示する等の工夫を行うことにより、相当程度、キャンセル料に関する消費者とのトラブルを避けられる可能性があるということです。
第3回、第4回は、非公開とされたため、議論の詳細までは不明ですが、今後も検討会の内容には注目する必要があります。
現状では、具体的なルールの案は公表されていませんが、仮に現行の消費者契約法9条1項1号の規程が改正されるとすれば、実務に与える影響は極めて大きいといえます。