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外部送信規律について 〜電気通信事業法令和4年改正〜

更新日:2024.02.26
弁護士   若竹宏諭
外部送信規律について 〜電気通信事業法令和4年改正〜
外部送信規律の導入
ウェブサイトやアプリが利用される場合に、当該ウェブサイトやアプリサービスの提供者が、ウェブサイトへタグを設置したり、アプリに情報収集モジュールを組み込むことによって、利用者の意思によらず、利用者の端末に記録されたcookieや広告ID等の識別子情報、閲覧情報等の利用者側の情報が外部へ送信される場合(外部送信)があります。
この外部送信について、透明性を高め、利用者によるウェブサイトやアプリの安心な利用につながるよう、令和4年の電気通信事業法改正によって新たに規制が設けられました。この改正法は、令和5年6月16日に施行されており、すでに改正に対応済みの事業者も多いと思われる一方、未対応の事業者も存在すると考えられますので、上記規制の概要をご紹介します。
外部送信のイメージ
(総務省 電気通信消費者情報コーナー 外部送信規律より引用)

外部送信規律が想定している典型的ケースは、上記イメージ図のとおりです。
①利用者が、ウェブサイト閲覧のためアクセスすると、②ウェブサイトのサーバから利用者の端末へ、ウェブサイトのコンテンツとあわせてプログラムが送信されます。このプログラムが、利用者の端末に記録された利用者側の情報を外部に送信するように指令(情報送信指令通信)する場合があります。③この指令を受けた利用者の端末は、その指令に従って、利用者の端末に保存された閲覧履歴などの利用者側の情報を外部に送信します。これによって、利用者の知らぬ間に広告配信のカスタマイズ等が行われます。
外部送信規律は、当該規律の対象となる事業者に対して、利用者の端末に外部送信を指令するプログラムを送る際には、あらかじめ、外部送信される利用者側の情報の内容等を通知・公表等する義務を負わせるものです。
外部送信規律の対象となる事業者の範囲
外部送信規律の対象となる事業者は、電気通信事業者又は第3号事業者を営む者です(電気通信事業法27条の12)。
電気通信事業とは、「電気通信役務を他人の需要に応ずるために提供する事業」であり(同法2条4号)、「電気通信役務」とは、「電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供すること」をいいます(同法2条3号)。
従来、電気通信事業法の規制は、電気通信事業を営むことについて登録を受け又は届出をした電気通信事業者に対するものが中心でしたが、外部送信規律については、電気通信事業法の適用対象外とされたいわゆる第3号事業(同法164条1項3号)を営む者も対象になりました。
そのため、外部送信規律の影響範囲は広いため、ウェブサイトやアプリサービスの提供事業者においても、自社のサービスが外部送信規律の対象にならないか留意する必要があります。
そして、外部送信規律の対象事業者になるかどうかは、上記の電気通信事業法の定義に当てはまるかどうかの問題です。上記定義のうち、特にポイントになるのは、「他人の需要に応ずるため」かどうかで、自己の需要のための情報発信であれば、これに該当しないとされています。例えば、自社や自社の商品・サービスに関する情報発信のためのウェブサイト運営や、商品販売やサービス提供の手段としてオンラインショップを用いることは「他人の需要に応ずるため」とはいえないとされています。
この点を含め、参考になるのは、総務省の電気通信事業参入マニュアル[追補版]及びそのガイドブック*1です。
外部送信規律の対象となるサービス
外部送信規律は、電気通信事業者又は第3号事業者を営む者が、ウェブサイトやアプリを通じて、次のいずれかのサービスを提供する場合に適用されます(電気通信事業法27条の12柱書、同法施行規則22条の2の27、電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン解説(令和5年5月18日版)*2)。
外部送信規律の内容(必要な対応)
外部送信規律の適用を受ける事業者は、情報送信指令通信を行おうとするときは、利用者が、情報送信指令通信によって利用者から送信される情報の内容や送信先等の事項を確認する機会をあらかじめ付与することが必要です。

具体的には、通知、容易に知りうる状態に置く(公表)、利用者からの同意を得る、又はオプトアウト措置を講じて当該措置を公表すること、のいずれかの対応が必要になります(電気通信事業法27条の12柱書、同条第3号、同条第4号)。さらに、これらの具体的な方法については、電気通信事業法施行規則22条の2の28以下に定められており、電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン解説(令和5年5月18日版)に整理されています。
適用除外
上記のルールにかかわらず、外部送信を行っている場合でも、外部送信規律の適用除外となる場合があります(電気通信事業法27条の12第1号、同条第2号、同法施行規則22条の2の30)。適用除外となるのは、利用者に対して当該サービスを提供するために必要な情報であり、例えば、サービス提供に必要なOS情報、画面設定情報、言語設定情報、ブラウザ情報等の利用者の端末に関する情報、サービス提供に「真に必要な情報」のほか、利用者が一度入力した情報を再表示するために必要な情報などです(電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン解説(令和5年5月18日版))。
おわりに
以上、外部送信規律の概要を見てきました。
総務省の公表している資料等によって、外部送信規律の適用の有無の判断が容易に行えるケースはよいですが、現実にはその判断が難しいケースが多いと思われます。そのような場合、事業者としては外部専門家の意見を聞くなどの対応が必要になると考えられます。
*1https://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/kinkyu02_000495.html
*2https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/telecom_perinfo_guideline_intro.html