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EUで、AIに関する包括的な枠組み規制案につき暫定的合意

更新日:2024.01.05
弁護士
志部淳之介
EU理事会と欧州議会がAIに関する包括的な枠組み規制案につき暫定的合意
 2023年6月14日、生成AIを含む包括的なAIの規制案である「AI規則案」が、欧州議会の本会議において賛成多数で採択された。同年12月9日、EU理事会と欧州議会は、EU域内で一律に適用されるAI(人工知能)の規制案(以下、「AI規制法案」という。)について、暫定的合意に達したと公表した。
 規制対象には、チャット形式で質問に回答するchatGPTや画像生成ができるStable Diffusion等のいわゆる生成型AI(※1) も含まれる。
※1別名、ジェネレーティブAI。人工知能が自ら答えを探して学習するディープラーニング(深層学習)を用いて構築された機械学習モデル。人間と同じように、新しいものを次々に生み出す点に特徴がある。
◆規制の内容
※2 https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/12/09/artificial-intelligence-act-council-and-parliament-strike-a-deal-on-the-first-worldwide-rules-for-ai/
 AI規制法案の条文案自体は公表されていないが、EU理事会のプレスリリース(※2)によると 、規制の内容は、AIの有するリスクの大きさに応じて規制の強度にグラデーションを設けた上で、重大な基本的権利侵害やその他の重大なリスクを引き起こす可能性が高いAI(報道ではhigh-risk AI system)についていくつかの項目を禁止行為と設定した。
◆禁止事項の例
 例えば、認知行動操作、インターネットやTV映像からの顔画像の無差別な収集、職場や教育機関での感情認識、ソーシャルスコアリング、性的指向や宗教的信念などのセンシティブ情報を推測するための生体情報の利用等が禁止対象となる。高リスクのAIシステム利用に関しては、データ・ログ管理や高度なサイバーセキュリティ水準等を提供者に課し、それをクリアしたもののみEU域内での提供が可能となる。
◆違反の効果
 禁止事項に違反した場合には、最大3500万ユーロの罰金又は前年度の全世界総売上高の7%のいずれか高い方が科される。
◆適用対象
 適用対象について、軍事・防衛利用や研究目的利用の場合は除外される。
◆施行時期
 AI規制法案は、欧州委員会と欧州議会による正式な採択を経る必要があるが、2026年中には施行される見込みである。