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裁判例情報(社内イントラネットへの新聞記事の画像データアップロード行為が著作権侵害に当たるとされた事例)

更新日:2022.12.31
弁護士   若竹宏諭
東京地方裁判所は、鉄道会社が、日刊新聞及び電子新聞を発行する新聞会社の記事の画像データを作成して記録媒体に保存した上、当該画像データを社内イントラネット上にアップロードして従業員等が閲覧できる状態に置いたことが新聞会社の記事に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害する行為であるとし、鉄道会社に約460万円の損害賠償を命じました(東京地判令和4年11月30日)。
本事件では、①新聞記事の著作物性、②鉄道会社のイントラネットに掲載された記事の件数、③損害額が主な争点となりました。
①について、鉄道会社は、新聞記事は、事実を伝達するものであり、正確性を使命とし、創作があってはならないなどと主張しましたが、裁判所は、著作物といえるための創作性の程度については、高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮すれば足りるとした上で、新聞記事がその性質上正確性を求められることとこのような創作性は両立し得るとし、本件における各記事はいずれも各記者の表現上の工夫を凝らして作成されたもの等と評価して著作物性を認めました。
②について、新聞会社は、鉄道会社が過去にイントラネットへ掲載した記事の一部について、具体的にどのような記事が掲載されていたかの特定ができていなかった時期があったものの、裁判所は、鉄道会社における直近のイントラネットへの掲載状況等の周辺事実から、著作権侵害の事実を認定しました。
③について、裁判所は、記事に係る著作権侵害による新聞会社の損害について、新聞会社が設定する記事使用料からそのまま損害額を導くのではなく、他社との取引事例やイントラネット掲載後の実際のアクセス状況等を考慮し、記事1件当たりの損害額を5000円と評価しました。
本件では、著作権が侵害された著作物が具体的に特定されることなく、著作権侵害の事実が認められた点が特徴的です。つまり、イントラネットへの掲載後、一定期間が経過し、データが削除されていた場合でも、著作権侵害の事実が認められる場合があるということになります。
本件で被告となった新聞会社は、業務に関連する最新の時事情報を従業員等に周知することを主たる目的に記事をイントラネットへ掲載していました。このように新聞記事に限らず、社内での情報共有のために第三者の著作物が利用されることは一般的にあり得ると思われます。本裁判例は、社内情報管理の在り方を検討する上で参考になるため、ご紹介します。
なお、東京地判令和4年10月6日においても同様の判断が示されています。